沈黙 -サイレンスー & カトリックとプロテスタント

      2018/07/06

話題の映画を鑑賞してきました、日本の小説家遠藤周作の原作を、タクシードライバー、ハスラー2等の話題作を手がけたマーティンスコセッシ監督の最新作「沈黙」、日本の長崎を舞台としたこの作品は、教科書に載っていたのでご存知の方もおられるかもしれません。

 

時代は1600年代前半、尊敬する神父フェレイラが拷問の末、棄教したとの噂を確認するため、アンドリューガーフィールド演じるイエズス会の神父ロドリゴが禁教下の日本に潜入してフェレイラを探すという江戸時代初期の日本のキリスト教をめぐるストーリーです。

 

日本人同士が話す部分は日本語の長崎弁ですが、他はほとんど英語でストーリーが進みます、実際はポルトガル語のはずなんですが、そこはアメリカハリウッド映画なんで目をつぶりましょう。出てる日本人のキリシタン百姓もイッセー尾形演じるお奉行さまも英語がすごく流暢で、逆にとてもシリアスなシーンなのにロドリゴがキチジローって呼ぶのがたどたどしくてちょっと笑えます。

 

主人公の敵対勢力である日本の幕府側の言い分にも筋が通っていて、キリスト教の教えを世界に広めたいキリスト教カトリック側と、邪教を拷問という手段を使ってでも日本に根づかせまいとする幕府側の立場の違いは、「正義の反対は別の正義」という言葉のようでとても考えさせられます

キリストの受難の時、裏切者の使徒ユダに、イエスが「為すべき事を為せ」と言ったセリフが映画の中で何度も使われたり、他にもなにかと聖書ネタが多い本作はキリスト教徒や、聖書を読んだことがある人が見るとなお面白いと思います。

 

 

 

歴史の教科書では、「キリスト教は江戸幕府に弾圧された」としか書かれていませんが、実はそれでは不正確です。キリスト教の中でもカトリックは弾圧されたが、プロテスタントは弾圧されていなかったのです。

 

1600年代前半当時のヨーロッパは30年戦争という宗教戦争中で同じキリスト教の中で守旧勢力であるカトリックと新勢力であるプロテスタントという二大宗派が互いに相手を邪教と呼び、まさに血で血を洗う大戦争を繰り広げていました。その中でカトリックは主にスペイン、ポルトガル等、プロテスタントはイギリス、オランダ等でした。

 

ここでオランダの名前が出てきましたが、長崎出島で唯一取引を出来たのはオランダ商人です、彼らはプロテスタントだったので、幕府と取引が許可されていたのです。

 

では、なぜ日本ではカトリックは弾圧され、プロテスタントはそれを免れたのか、それは宣教師の有無が命運を分けます。

30年戦争当時、新勢力であるプロテスタントはカトリックをしのぐ勢いで勢力を伸ばしていました。そこでカトリックは宣教師を世界中に派遣して、由緒正しいカトリックの教えを世界に広める事によって逆転を企図したのです。

日本側からすれば、すでに神道と仏教があり一定の秩序があるのに、それを崩す可能性を持ったカトリックが入れば混乱が起こります。まさに宣教師は宗教戦争の種を運ぶ者との認識でした。だから幕府はキリスト教カトリックを弾圧したのです。

 

同じ宗教の宗派対立は現在でも続いています。プロテスタントのイングランドに対してカトリックのアイルランドがつい最近までテロ事件を起こしていた時期もありましたし、現在の自称イスラム国ISの問題もイスラム教のシーア派とスンニ派の対立が元になっています。

歴史的にもなかなか根深い問題なので、解決は非常に難しいのでしょうね。

世界も日本くらい宗教にアバウトになればいいのになぁと思う次第であります。

今日もにゅ~ぺとりをご覧頂きありがとうございました。

 

 

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