北朝鮮またもミサイル実験、VXガスと弾道ミサイル

      2018/07/10

今朝7時半頃、またも北朝鮮が4発の弾道ミサイル実験を国連決議第2321号を無視して強行し、3発は日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下しました。EEZ内への着弾は日本海で操業する漁師さん達にとっておちおち漁にも出られないリアルな恐怖であると推察します

 

今月1日から始まった過去最大規模の米韓軍合同野外機動演習「フォールイーグル」への反発と見られています。

 

前回2月12日のミサイル実験の時とは明らかに違う点があります、ミサイルの発射本数が4本に増えた?それももちろんありますが、もっと重要なのは先日のマレーシアでの金正男氏暗殺事件にVXガスが使われたという事です。

 

VXガス=毒ガスは化学兵器と呼ばれる種類の大量破壊兵器です、核技術に対して比較的簡単に、そして安価に製造できる兵器で「貧者の核兵器」とも呼ばれてきました。

核、化学、これに加え生物兵器(ウィルス等)を一般的にNBC兵器(”N”uclear(核) ”B”iological(生物) ”C”hemical(化学)ともいいます。

特に金正男氏の暗殺に使われた毒物、VXは人類が作り出した即効性の毒物の中で最強の威力を持つものです。「ガス」と言われていますが、通常は無味無臭、琥珀色の揮発性が低い油のような液体で、水にも溶けにくい為、水で薄める事は出来ず、化学薬品での洗浄が必要です。呼吸器や粘膜からだけでなく、皮膚からも吸収されてしまうので、ガスマスクだけでは防ぎきる事は出来ません、散布されれば一週間ほど区域内に留まり続け、皮膚に触れるだけで嘔吐、痙攣、呼吸困難、意識障害、心肺停止などの症状が突然現れ死に至ります。わずか11リットルで100万人の内50万人を死に至らしめ、あとの50万人にも重大な悪影響を及ぼすというデータもあります。

 

もともとはイギリスで強力な殺虫剤を製造する際に偶然合成された薬物で、冷戦時代であった為にさらに研究され、完成したVXは核技術と引き換えにアメリカへと譲渡されています。冷戦後の1997年に全ての化学兵器の開発・生産・貯蔵・使用を全面的に禁止する「化学兵器禁止条約」が発効し、世界中のほとんどの国で禁止されたのですが、エジプト、イスラエル、南スーダン、そして北朝鮮はこの条約に批准していません、先日の暗殺事件で北朝鮮国内に確実にVXを生産できる施設があると言うことが世界中にバレてしまったと言ってもいいでしょう。

核弾頭=核起爆装置はそのコアであるウラン、プルトニウムからして非常に重たい物です、弾道ミサイルにを搭載するには、それだけ強力なエンジンを開発しなければなりません。しかし、VXや、天然痘ウイルスなどBC兵器は核と比べて軽く、大量に弾頭内に搭載でき、従来型のエンジンでも飛ばす事ができます。

 

これがもし私達の頭上で炸裂すれば、甚大な被害は免れないでしょう。

北朝鮮の核技術だけではなく化学兵器VXと弾道ミサイルの組み合わせがいかに恐ろしいものである事がお分かりいただけたかと思います。

 

今回も日本政府は「このような北朝鮮による度重なる挑発行為を断じて容認できず、北朝鮮に対し厳重に抗議を行うとともに、最も強い表現で非難した。」との声明を出し抗議していますが、なんら実効性ある対応が出来ないでいます。このまま実験を放置すればさらに大量の毒ガス、強力な核弾頭を作る時間とチャンスを与え続けている事に他なりません。国民の安心安全の為、一刻も早い実効性のある対応が日本政府には求められています。

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